よくあるケース・・・・実績管理はなぜ必要か

残念ながら、経営計画の作成というと、作成自体が目的となってしまい、経営計画を作成したものの、その後は、経営計画はほったらかしになって、以前と変わらず日常業務に忙殺されている、どこにいったか分からない、挙句の果てには計画書を作成したことさえ忘れている会社は多いのではないでしょうか?経営計画はあくまで「目標を達成するための手段の一つ」にしかすぎません。もちろん、経営計画を作成することで、目標が明確になり、達成方法を具体的になりますので、作成するだけでもメリットはあるのですが、最終的な目的は「経営理念の実現」であり、「中期経営目標の達成」です。目標を達成するためには、作成した経営計画を有効に活用してこそ、初めて目標達成に一歩近づくことができます。

そのためには、下記のことを行う必要があります。

  1. 経営理念、経営目標を常に意識する
  2. 実績を経営計画と比較する
  3. 問題がどこにあるかを究明し、対策を講じる
  4. 将来を予測する仕組みを作る

1 経営理念、経営目標を常に意識する

経営理念、経営目標を明確にし、社員に発表しても、日常の仕事に忙殺され日にちが経つにつれ当初の目標は社員の意識からは徐々に薄らいでいきます。ともすると経営者まで忘れてしまっているということもあり得ます。

経営理念、経営目標は常に意識するようでないと目標は達成できません。そのための「環境づくり」が重要となります。具体的には、

・経営目標を社内に掲げる
・経営計画書を定期的に確認する場を持つ
・個人目標を各自の机に貼る
・毎朝の朝礼で唱和する
・具体的な行動規範(行動ルール)として落とし込む
・ことあるごとに社長が経営理念について話す
・社員が経営理念に対する思い・考えを発表する場を設ける

などの仕組みが必要となります。会社にあった方法で根気強く継続することが重要です。

2 実績を経営計画と比較する

2つ目のポイントは、「実績を計画と比較し、計画とのずれを把握する仕組み」をつくることです。具体的には、予算(計画)、実績、予算と実績との差額を記載した「予算実績対比表」を作成し、利益目標や商品別・得意先別の売上目標に対して各々の結果がどうであったかを達成率や差額にて表示します。

単なる実績だけでは、今後の対策を立てることは困難ですが、目標に対してどれだけ差が生じているかを明確にすることにより、計画を実行した内容のうち、何がよくて何が悪かったのかを検討する材料になります。全社レベルや部署レベル、個人レベルで、何が、どれだけ「ずれ」が生じているかを明確化することが必要です。しかも、その「ずれ」はタイムリーに入手する必要があります。1ヵ月後に「ずれ」が分かっても後の祭りです。

当月の結果はなるべく「翌月の月初(理想は翌月1日)」に作成すべきです。ずれを修正するための「手」は早く打つ必要があるからです。正確性を重視する経理の視点ではなく、迅速性を重視する経営の視点にポイントをおいた予実管理資料を作成するようにします。概算でも良いからできるだけ早く予算実績の資料を作成することが必要です。そのためには経理業務を自社で行なって、月次決算制度を確立することも検討すべきです。

また、予算と実績の対比というと金額のみに着目しがちですが、金額の裏付けとなった「行動」についても当初の目標と実行した結果を比較し、何がよくて何が悪かったのかを検討することは絶対に欠かせません。

3 問題がどこにあるかを究明し、対策を講じる

3つ目のポイントは、問題がどこにあるかを究明し、対策を講じることです。通常は毎月「経営会議」を開催し、その会議で検討します。したがって、この経営会議が目標達成を左右する大きな要因となります。経営者、経営幹部と各部署の責任者が一堂に会し、管理資料を元にして、

・計画と実績との差を確認し、
・その原因がどこにあるのかを究明し、
・今後の対策

を検討します。

しかし、残念なことに経営会議がマンネリ化している場合が少なくありません。
マンネリ化する原因は様々ですが、最大の原因は「なんのために会議を開くのか、会議の目的を忘れている」ことに尽きるといえます。

そのため、

・ 議論が脱線する、単なる雑談。
・ 以前と同じ内容を再度議論する、議論がかみ合わない、など会議が長引く。
・ 達成できなかった言い訳に終始する。
・ 社長の叱責と罵声のみが飛び交う。

といった会議になりがちです。会議を行う目的は、現在の状況についての情報と将来の方向性を出席者全員が共有化することで、全員が同じ方向に向かって一丸となって努力することですので、目的を認識しないまま一生懸命会議をやっても、単なる時間の浪費にしかなりません。

会議を意義のあるものとするためには、

・ 議論すべき内容を明確化し、事前に出席者全員に議題を連絡するとともに、事前に資料を配布する
・ 出席者には事前に今後の対策を考え、必要な資料は事前に作成するよう指示する。
・ 会議中は事前に作成した資料やホワイトボードなどを活用し、今何を議論しているのかを出席者全員が共有する。
・ 会議で何を議論し、何を決め、次回までにすべきことを明確にするため、議事録を作成する。

といったことを行うことで、計画と実績とのずれを埋めるための意義のある会議を開催することができます。

4 将来を予測する仕組みを作る

経営の「市場の変化を正しくとらえ、将来を予測し、これに適切に対応すること」のうち、将来の予測とその対応は、「経営者の勘、ひらめき」に委ねられている部分と「その勘・ひらめきを実現する方法を科学的・合理的に考える」という部分とに分かれます。科学的・合理的に考える部分はシステムや仕組みによって行います。

具体的には、

・ 毎月、前月までの実績及び当月以降の経営計画値により、当期の見込損益計算書、見込キャッシュ・フロー計算書を作成し、毎月の経営会議の資料とします。
・ 上期が終了したら中間決算を行い、下期の計画を練り直します。
・ 決算の2〜3ヶ月前には「決算予測」を行います。利益予測・納税手当等を行うと共に、必要に応じて余裕を持って「タックスプラン」も検討します。
・ 決算後、決算評価を行い、1年間の経営の総括を行うのは当然ですが、必要に応じて自社分析を行い、会社の価値を評価します。

以上により、予測される経営に不都合なことを事前に取り除き、後手に回ることなく早め早めに手を打つことが、事業の発展に繋がっていきます。