事業を着実に継続していくために

日々の業務に追われてゆっくりと自社の将来を考える機会がない。といった声はよく聞かれます。しかし、経済環境が厳しくなっている現在、やみくもに努力するのではなく、まずは将来の目標を描いたうえで、そのためには「今何をしないといけないのか」ということを徹底的に考える必要があります。

事業をより発展させていくためには

現在業績が好調な企業であっても、
「将来を考えると今後業績がどうなるかわからない」
「さらに事業を発展・成長させたいがなかなか成長しない」
といったことで悩んでおられる経営者の方も多いかと思います。

一方で、
「うちの会社は業績が好調なので問題はない」
と考えておられる経営者の方もいらっしゃいます。

経営学の理論の一つに、製品ライフサイクルという考え方があります。これはある商品・市場は時間とともに、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4段階を経ていくというものです。

製品ライフサイクルの図

具体的にはブラウン管テレビ、液晶テレビ、レコード、CD、ポケットベル、携帯電話などを思い浮かべていただくとイメージが湧きやすいのではないかと思います。この考え方は、個々の企業にとっては現在の業績が好調であっても、一つの事業しか行なっていなければ、そして、将来を見据えた対策を考えていなければ、いずれ市場の衰退とともに売上・利益が減少していくということを示しています。そして、その時が来た時に慌てて対策を考えても手遅れとなる場合がほとんどです。将来への備えは、会社が元気な時にしかできません。

対策

事業を継続させ、さらに発展させていくためには、前述したとおり、次の3つのことを行う必要があります。これらを実践することにより、企業体質が強化、改善され、100年以上にわたって会社を永続させることも可能となります。

  1. 将来の目標を明確にする・・・・経営理念・中期経営目標の設定
    日常業務に追われ、将来のことを考える余裕がない。そのため、成り行き任せの経営となっており、得意先の倒産、取引中止により徐々に売上が減少している会社も多いのではないでしょうか。一度原点に立ち返って将来の目標を明確にすることが必要です。その際注意しなければいけないのは、次の2点です。
    ・ 目標を数値化する
    ・ 目標を社員全員が共有化し、方向性を統一する。
  2. 目標を達成するための具体的な方法を明確にする・・・・経営計画の作成
    目標を達成するための方法を具体的に決めます。その際、実際に実行する人が達成するための具体的なアクションプラン(行動計画)と、それにもとづいた数値計画(損益計算書、キャッシュフロー計算書など)を作成します。
  3. 実績を管理する仕組みをつくる・・・・PDCAサイクルの確立
    目標がどの程度達成されているのか、目標と実績とのずれをタイムリーに把握・管理する仕組みと、ずれを分析して、今後の課題を検討し、対策を講じるといった、軌道修正する仕組みを作ります。

事例

ある会社では、社長がお酒が好きなこともあり、本来は自分のお金で飲みに行かなければならないところ、接待を理由に得意先と高級クラブで毎晩飲み明かし、また、仕入からも接待攻勢を受けていました。当然、交際費まで考えるとその得意先の損益は赤字、また仕入先の接待費用は商品の仕入単価にも反映され、他社よりもコストは高くなっているのですが、社長はそんなことはお構いなし、だんだんと市場が縮小し、競争が激しくなるにつて、売上が減少、赤字の状態が慢性化し、資金繰りがギリギリの状態で推移していました。

そのような綱渡り的な状況の中、アメリカのサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機により、売上が急減、資金がショート寸前となったため、最終的に、経営者が交代することとなりました。

新任の社長は、「中長期的な視点で経営を行わず、場当たり的に対応してきたことが原因である」と考え、「中期計画書」、「当期の収支見通し」を作成、また、月々の損益を把握できるよう、社内の経理担当者の協力を得ながら月次決算も実施、計画と実績とを毎月比較し、タイムリーに対策を講じるようにしました。

その結果、景気の回復とも相まって、売上は徐々に回復し、利益と資金繰りは以前からは大幅に改善しています。社長は、「今まで手探りの状態で経営してきたことが信じられない」とよく言われています。