経営の世界は合理的にできています。行き当たりばったりでは必ず経営は行き詰ります。そのためには、2つのことが重要となります。

  1. 現在の変化の激しい環境にあって、市場の変化を正しくとらえること
  2. 将来を予測し、市場の変化に適切に対応すること

    (市場の変化をとらえるための具体的な手順)
    ・ 将来の目標を明確にする・・・・経営理念・中期経営目標の設定
    ・ 現状を分析し、自社の強み、弱み、経営課題などを把握する
    (市場の変化に適切に対応するための具体的な手順)
    ・ 現状分析を通じて目標を達成するための具体的な方法や手段を明確にする・・・経営計画の作成
    ・ その対策を実行すること
    ・ 実行した結果、目的が達成されたかどうか確認し、今後の対策を修正すること
    ・ 上記を繰り返し行うこと・・・実績管理
    ・ これらを会社の風土・文化として定着させること

経営理念を明確にする

経営理念の必要性

まず、経営理念を明確にします。経営理念は会社の社会的な使命を表現したものです。社是、社訓とも言われます。経営理念いうと一般には、「言っている内容は理想的だけれども、現実と遊離したお題目のようなもの」と思われている方も多いようです。しかし、本来経営理念とは会社を設立しようと思われた決意や思いを表現したものではないでしょうか。人によってそれは異なるとは思いますが、「いい製品を世の中に送り出したい」、「お客さんに喜んでもらいたい」、といったことが原点にあったのではないでしょうか。その原点を再認識させてくれるのが、経営理念です。そして、経営理念の役割はそれだけにとどまらず、得意先や仕入先など会社の外部に対しては、「こういう方向に行きたい」、「こういう仕事をやっていくぞ」という会社のメッセージであり、社員に対しては、うちの会社はこういう方向に行きたい」という社長からのメッセージでもあり、かつ、「こういう考えたかで仕事をしないといけない」、また、判断に迷った時のよりどころでもあります。経営理念とは、単なるお題目や美辞麗句ではなく、外部に対するメッセージ、社員に対するルールのようなものと考えると、経営理念を明確にする必要性も理解していただけるのではないでしょうか。

ポイント

経営理念は社員に浸透してこそ初めて意味を持つものですから、そのための工夫として、覚えやすいこととコンパクトであることが理想です。

中期経営目標を設定する

経営理念を明確にしたら、経営目標を決めます。経営目標は、3〜5年後に会社がこういう状態になってほしいという姿や、今後どのような商品・サービスをどの市場で販売するのかといったことなどです。

例えば、売上××億円、利益××億円、支店数××店、海外市場進出といった具体的な目標です。

現状を分析する

目標を決めたら、現状分析、経営課題の抽出、中期計画の策定の順に進めていきます。経営理念、中期経営目標の設定が経営者の仕事であるのに対して、現状分析、経営課題の抽出、計画の策定は、経営者だけでなく経営幹部(役員クラス)も参画することが理想です。これらの内容は経営者と経営幹部が共通の認識を持つ必要があるからです。ただし、慣れないうちは経営者だけで行う方がスムーズに進むケースが多いようです。

現状分析は、孫子の兵法に「敵を知り、己を知らば百戦危うからず」とあるように、市場での競争に勝つためには、市場・ライバルの状況(敵)と会社自体(己)がどうなっているかを知る必要があります。その方法には、PEST分析やハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱した5Forces分析など様々なものがありますが、詳細な分析をしようとするあまり、時間や費用が多大にかかるようでは意味がありません。ここではある程度簡便的な下記の分析方法をご紹介します。

1 販売力分析

販売力分析とは、自社の商品・サービス内容の分析です。商品ごと・事業ごとに、市場性、商品の質、価格競争力、営業力、今後の見通しなどを分析します。

2 体力分析

体力分析とは、会社の体力の分析です。社員の原価意識の浸透度合いや自己啓発を行っているかどうかなどの「基礎力」、計画的に社員教育を行っているか、経営方針が社員に浸透しているかなどの「組織力」、新技術や同業他社の研究の有無などの「発展力」等の分析を行います。

3 管理力分析

管理力分析とは、経営幹部の管理能力の分析です。経営幹部が戦略的なものの見方・思考ができているかどうか、目標達成状況を常に把握しているかどうかなどの「業務遂行能力」、会社の方針を部下に浸透できているか、全社的な視点に立った提案を行っているかなどの「補佐能力」、部下の育成や良好なチームワーク構築などの「指導能力」、顧客とのトラブル解決能力や他部署との調整能力などの「折衝能力」等の分析を行います。

4 経営環境分析

以上の分析を通じて、
・ 同業他社と比べた会社の強み
・ 逆に会社の弱み
・ 市場の拡大など機会(ビジネスチャンス)となるもの
・ 逆に他業種からの参入など会社にとって脅威となる事項
を整理します。経営環境分析は一般的に、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats)の頭文字をとって「SWOT分析」と呼ばれています。

経営課題の抽出

現状分析を行うことで、「借入金が過大となっており、遊休資産の売却などを行い、なるべく返済を急ぐ必要がある」、「将来的に市場が衰退することが予想されるため、将来の柱となる新規事業を立ち上げる必要がある」などの経営上の課題が明確となります。同時に経営課題の改善方法を考えていきます。特に、経営環境分析は、市場から見た自社の位置づけがより明確となりますので、具体的な改善方法を考える上で最も有用な資料となります。その際、下記の4つの視点を念頭に置きながら行うとより効果的です。

・ 自社の強みを用いて機会(ビジネスチャンス)を活かすためには何をすべきか
・ 自社にとっては脅威でも、自社の強みで機会に変えることはできないか?そのためには何をすべきか
・ 脅威と弱みのダブルパンチによる最悪の事態を招かないために何をすべきか
・ せっかくの機会(ビジネスチャンス)を自社の弱みで取りこぼさないためには何をすべきか

中期経営計画を策定する。

経営課題を解決し、中期目標を達成するための中期の行動計画、数値計画を策定します。

1 計画はだれが作成するのが良いか?

中期計画の策定は、経営者および経営幹部が中期経営目標にもとづいて全社及び各部署の計画を作成する「トップダウン方式」とし、一方で、当期の計画については、各部署からの計画を積み上げて全社の計画を策定する「ボトムアップ方式」により作成し、その上で、両者のかい離を調整し、全社の中期計画、当期計画とすることが理想です。

なぜなら、将来の望ましい姿、理想を考えることは経営者の役割であるのに対し、各部署(現場レベル)は日常業務を行っているため、具体的、かつ、短期的な当期計画の作成に適しているからです。

また、「トップダウン方式」が「中期計画目標」からスタートしていることから、将来の望ましい姿・理想が計画として示される反面、場合によっては非現実的な計画となる可能性があります。一方で、「ボトムアップ方式」は現実・現場レベルからスタートしていることから、現実的ではあるものの、中長期的な経営課題が解決されず、いつまでたっても会社が変わらない可能性があることから、両者の計画をすり合わせる必要があるためです。

また、トップダウン方式による中期計画とボトムアップ方式による当期計画とのすり合わせを行うことにより

・ 実現性の高い目標の作成
・ 現業責任体制の強化
・ 経営参画意識の向上
・ 幹部のレベルアップ
等を図ることが可能となります。

ただ、最初から当期計画をボトムアップで策定することは難しい面もありますので、慣れるまでは当期計画についてもトップダウン方式で作成することも考えられます。

2 数値目標を策定する

当期目標、改善方法、今後の見通しなどを具体的な数値に落とし込みます。具体的には、下記の手順で行っていきます

売上計画の作成
商品ごとまたは取引先ごとに将来5年間の販売単価、販売数量を決めていき、売上の計画を作成します。

経費計画の作成
上記の売上を達成するために必要な社員数、給与水準、広告宣伝費などの経費を決めていき、経費計画を作成します。

投資計画の作成
同様に、売上を達成するために必要な設備とその金額、投資時期などを決めていき、投資計画を作成します。

資金調達計画の作成
同様に、売上を達成するために必要な借入金、増資の内容などを決め、資金調達計画を作成します。

上記の結果を「貸借対照表」、「損益計算書」、「キャッシュ・フロー計算書」としてまとめます。

3 行動計画を策定する

中期目標を実現するため、いつ、どのような行動をすべきか、具体的実施内容、担当者、実施時期などを決め、スケジュール化します。