経営計画は無駄

経営者の中には、「計画を作成しても、計画で決めたとおりにうまくいかない。作成するだけ時間とお金の無駄」
と考えておられる方も多いと思います。

経営計画を作成してもうまくいかない原因は様々ですが、

・ 単純に、前期実績をベースにしてプラスマイナス●●%といった形で売上高、原価、経費、利益を決めるため

という原因が多いのです。具体的な売上金額、原価金額等を決めて計画を作成することは必要ですが、大事なことは、数値を決める際に、

・ その売上、利益を達成するためにはどのようなことをしなければならないのか

ということを徹底的に考えることです。行動の裏付けのない計画は単なる数字遊びにしかすぎません。

また、経理や税金のことは苦手なので、経営計画の作成は会計事務所に任せている。
という経営者の方は多いのではないでしょうか。もちろん、経営者の方が簿記や税法について詳細に勉強する必要はありませんが、
「売上を××百万円増やした場合には、約××百万円の原価や費用がかかる」
「金利が××%上昇したら、利益が××百万円減少する」
といった会社の大まかな内容については把握されているかと思います。
経営計画の作成は、「経営者のアイデア、考えを、実際に実行した場合に、売上や損益、資金繰りがどうなるか数値に置き換えてみる」といったシミュレーションすることも目的の一つです。そうしたシミュレーションは経営者の積極的な関与なしには作成できません。そうすることにより、「売上を××百万円増やした場合には、利益は××百万円増えるが、当社は売上代金の回収よりも商品の支払いが先行するため、短期的には資金がショートする」といった、普段は深くまで考えることができない資金繰りの状況なども明らかになります。
逆に、会計事務所が作成した経営計画は、「所詮は他人が作成したもの」であるため、経営者もその計画を本気で実行する気にはなかなかなれませんので、そのような計画は絵に描いた餅となります。このことが経営計画を作成しても失敗する原因の一つです。

その他、経営計画が失敗する主な原因は下記のとおりです。

・ 社長の頭の中には中期的な目標、計画はあるものの、経営幹部、社員との間で情報が共有できていないため、社長からすれば「自分が考えていることを社員が理解してくれない」、「自分が思うように社員が働いてくれない」、逆に社員からすれば「社長からなぜ怒られるのかわからない」といったことが発生している。

・ 計画と実績との比較・差異の把握が行われていない

・ 差異があった場合には、今後の行動を修正する必要があるが、それが行われていない

経営計画は必要ない

また、「会社の強み・弱み、同業他社の状況、市場の将来性などは普段から意識しているし、会社の内容はだいたい頭の中に入っているので、経営計画を作成する必要ない」と言われる経営者の方もいらっしゃいます。しかし、

・ 当社が強みと考えていても、他社と比べると本当に強みといえるのかどうか

・ 将来当社がこのような行動をしたときに、他社がどのような行動に出てくるか

・ 将来新製品、新サービスが開発され、市場が縮小した場合に備えて今からどのような行動をしておくべきか

・ 当社の強みを活かして売上を増やすためには具体的にどうすればよいのか
といった内容を、あらためて深く考えてみると普段の意識とのギャップに愕然とされる経営者の方は少なくありません。

経営計画は作成することが目的ではなく、作成する過程を通じて、

・ 自社の強み・弱み、同業他社の状況、市場の将来性などの会社が置かれている状況を考えるきっかけとなる。

・ 現状把握を通じて今後会社が取り組まなければならない課題とその対策が明確になる。

といった効果があります。

さらには、「現状のままではじり貧となる一方だが、かといって積極的な投資を行ない過大な借金を背負うことはもっと危険」との理由から「積極的な攻めの経営」ができない経営者の方も多いのではないでしょうか。これはひとつには、経営計画を作成していないので、「どこをどうすれば良くなり、あるいはどの程度悪くなるのかといったことがわからない」ということも原因の一つです。「この部分を改善すればこのように良くなる」あるいは、「この部分を改善してもあまり効果がない」といった様々なシミュレーションが、計画を作成することでできるようになります。

経営計画はあくまで事業を継続させ、より発展させていくための一つの道具にしかすぎません。計画を作成したからといってすぐに儲かるわけではありませんが、これらのことを着実に実行していくことにより、現業責任体制の強化、経営幹部のレベルアップ、社員の経営参画意識の向上などを通じて、長期的には「筋肉質の企業」に生まれ変わります。